小田宗治建築設計事務所


◆ 知っておきたいこと

建築にまつわる基礎知識として、いくつかの話題を取り上げます。


● 建築にかかわる三者とは

建築が行われるには、以下の三つの役割が必要です。

  • 施主さん(発注をする)
  • 施工者(工事をする)
  • 設計者・監理者(設計をし、工事が設計通りかチェックする)

ハウスメーカーや建設会社は、施工者と設計者・監理者が一体化していて、施主さんから一括して仕事を請け負うことができます。これが一番簡単なかたちに見えますが、一方で、主に工事だけをする工務店や、設計・監理だけをする設計事務所もあります。こうした分離したかたちがあるのは、やはりそれによる利点があるためです。

たとえば施工者と設計者・監理者が癒着すると、施主さんよりも施工者の立場を優先した安易な設計がなされたり、工事のチェックが甘くなったりすることがありえます。(その辺を良心的にやっている会社ももちろんありますが)

設計者・監理者が施工者と独立していれば、そうしたことを原理的に防ぐことができる訳です。
ここでは、施主さんと設計者・監理者が「設計・監理契約」を結び、
施主さんと施工者が「工事契約」を結ぶことになります。


● 設計事務所に依頼する意義は

設計事務所に依頼する意義としては、以下のようなものがあります。

  • しがらみのない自由な計画が可能
    (個性的な要望への対応、工法・材料の選択が自由)
  • 一つの設計案に対して複数の施工者からの相見積りが可能
    (コストについての客観的な検証)
  • 施工者から独立した立場での厳しい工事監理が可能
    (馴れ合いを排したチェック体制)

これらは、設計・監理を、施工とは分離して依頼することで成り立つもので、ハウスメーカーや建設会社に一括して依頼する場合は難しい点があります。

また、一括して依頼する場合、施主さんはつくり手に対して一人で対峙しなければなりません。つまり、言われた内容やコストを全て自分でチェックする訳ですが、専門知識がない中でこれを行うのはなかなか大変です。設計事務所に依頼する場合、設計者は施主さんのブレーンの立場となり、そうしたチェックを代行できます。

空間の形を考えるだけでなく、設計内容を技術的に調整したり、施工者と交渉したりして、工事費を抑えることも、設計事務所の大きな役割です。そうして削減できる費用は、しばしば設計料と同等以上にもなりえます。つまり施主さんにとって設計事務所に依頼することは、その費用の元を取りながら満足度の高い建物を手に入れる方法とも言えるかもしれません。

建物づくりは、施主さんにとって人生の「上げ潮」の時期に当たることも多いですが、設計者が気の合うパートナーになれば、その期間をより楽しい体験にできるということも言えるでしょう。


● 設計には「意匠・構造・設備」という分野がある

設計事務所は、専門の分野によって、大まかに三つの種類に分かれます。

  • 意匠 設計事務所(意匠面を含んだ全体を担当)
  • 構造 設計事務所(力学的な構造面を担当)
  • 設備 設計事務所(給排水・ガス・空調・電気等の設備面を担当)

当方は意匠設計事務所にあたります。通常は、意匠の事務所が施主さんとの窓口になり、三つの事務所がそれぞれの専門性を活かしながら、協力体制をとって設計を進めます。(小さい案件では、意匠の事務所が、構造と設備を担当することもあります)

一般に、施主さんは、意匠の事務所と契約し、意匠の事務所は、構造と設備の事務所と契約します。施主さんが支払う費用の中には、各事務所への支払が含まれることになります。


● 土地選びについて

土地を選ぶ際に注意したい点をいくつか挙げてみます。

土地の機能面の確認

  • いわゆる建築条件の有無(売主が特定の施工者や建築の仕様を指定しているかどうか。費用を払えば条件を外せることも多い)
  • 上水道、下水道、都市ガスなどの有無(なければ別途費用がかかる)
  • 交通機関、公共施設、商店などへの距離
  • 採光、通風、騒音、異臭などの状況
  • 周辺環境の変化の兆し、大規模な開発の予定の有無
  • 道路や敷地に工事車両が停まれるような余裕があるか(あれば望ましい)

※変形敷地や狭小敷地は、必ずしも機能的に問題ではありません。知恵を出して自由な設計を行えば、魅力的な土地にもなりえます。

土地の安全面の確認

  • 土地が以前、水田、沼、埋立地等でなかったか(地名にもヒントあり)
  • 地盤沈下、過去の浸水被害などの有無
  • 周囲との高低差、水はけ
  • 地質、地盤の状態
  • 埋設物の有無(旧い配管・浄化槽、廃棄物、杭などがあれば費用がかかる)

※地盤は強いに越したことはありませんが、多少軟弱でも、地盤改良や杭を打つことで克服できます。ただしその分費用はかかります。

土地の法的な確認

  • 道路に2m以上接しているか
  • 接する道路の幅が4m以上あるか(狭い場合、使える土地が削られる)
  • 用途地域(希望する用途の建物が建てられるか)
  • 登記簿謄本(地目、地積、所有権、抵当権などに問題がないか)
  • 公図(敷地の位置と形状、周囲との関係に不整合がないか)